遺灰ダイヤモンドの指輪【オーダーメイドDR058】

オーダーメイド:「君のために世界一綺麗なダイヤになるよ」

ステキなお話です。そして本当のお話です。

T様が初めてご来店なったのは2010年の暑い夏でした。お持になったジュエリーは0.7ct程の美しいブルーダイヤの花のリングです。

「あれ?この色のダイヤ、以前にも見たことある。。。」

みなさんは遺灰ダイヤってご存知ですか?

遺灰ダイヤとは亡くなられた方の遺骨から炭素を抽出し精製した合成ダイヤモンドです。
天然ダイヤは何百、何千年もかかって地中深くで結晶化しますが、合成ダイヤモンドは高温、高圧処理を人工的に施すことにより生産したダイヤモンドです。硬度、比重、屈折率、分光特性などは天然のダイヤモンドと何も変わりません。確かにルーペで見てもダイヤモンド特有の輝き、硬さなどが見てとれます。

スイスなど海外の企業に遺灰を送り発注することが出来るようです。保証書も付いているのでその品質を疑う余地はありませんが、ひとつ特徴的なことを言えば、色がブルーであるということ。調べてみるとブルーだけでなく、イエロー、グリーンなどにも生産できるようです。

実は当店で加工を承る遺灰ダイヤは3ピース目です(2010年時点)。ですからもちろん見てすぐに「遺灰ダイヤ」であることは分かりました。

さて….お客様。

「実はこれ主人なんです。」

ダイヤは毎日見ていますから緊張などすることなどまったくありませんが、こと遺灰ダイヤとなるとやはりとても緊張します。
お客様にとってみれば大切な方の魂が入っているダイヤですから、その気持ちが私にも伝わります。

実はすでにリングに留まっているご主人ダイヤモンドですが、お客様はその枠がいまひとつお気に召さないようで、作り変えをご希望されています。花びらのようなデザインの真ん中に、ご主人ダイヤが留まっているのですが、造りもデザインもいまひとつ、確かに少し残念な出来栄えです。

基本的なデザインのコンセプトは変えずにお造り直しを引き受けさせていただきました。

そして話は自然とご主人の話題へ。

2年ほど前に交通事故で突然ご主人がT様の前からいなくなってしまいました。なかなか立ち直る事が出来ないようで、とてもお辛そう。

「それにしてもどうして遺灰ダイヤを造ろうと思われたのですか?」

私の質問にポツポツとご主人との思い出をお話してくださいました。

ご主人が生きていらっしゃる時に、遺灰ダイヤモンドのテレビ番組を偶然お二人で見ていたそうです。
その時は何の気なしにおっしゃったのでしょうが、奥様に向かって
「もし僕が死んだら僕の骨でダイヤモンドを作ればいいよ。そしたら世界一綺麗に君のために輝いてあげるよ。」

この予言のようなメッセージが現実のことになってしまうとは。。。。

一ヵ月後。。。出来上がったリングがこちらです。
遺灰ダイヤリング

花びらにギッシリとパヴェ留めでメレダイヤを敷き詰め、その5枚の花びらの中心にご主人ダイヤモンをセット。
高級感溢れるキラキラ輝くとても素敵なリングになりました。

出来上がったリングを見てT様はとても嬉しそう。
少しお元気になられたように見えて私もとても嬉しくなりました。

まったくの他人である私にだからこそ、とても私的な事を話しやすかったのかもしれません。ですがT様にとっては辛いことだったのではないでしょうか。出来上がった指輪が少しでもT様を元気付けることが出来ますように!癒して差し上げることが出来ますように、祈るような気持ちと共に納品さえていただきました。

私はあらためてT様をとても羨ましく思います。

「君のために世界一綺麗に輝くよ。」
そんな事を言ってもらえたら女としてどんなに幸せなことでしょう。
亡くなってもずっと愛情を感じていられるなんて凄すぎです。

私にはT様がとても輝いて見えました。それはきっとご主人に愛されている確信と自信がお顔に表れていたからなのだと思います。

その後T様よりお手紙をいただきました。
こちらはお客様のお許しを得て、お客様の声のページでご紹介させていただいています。

お客様からのお手紙

まだまだお若いT様。人より辛いご経験をしたかもしれませんが、なによりT様にはステキなご主人との思い出と、世界一輝くダイヤモンドがあります。これからもっともっと幸せにになって明るく輝く女性になってください。
こんなステキなお話を皆様にお伝えすることができて幸せです。それを快くお許しくださったT様に本当に感謝いたします。

よろしくお願いいたします。

ジュエリー制作ノート

【制作方法】ご来店での打ち合わせ、デザイン画制作、鍛造手作りでのオーダーメイド
【制作アイテム】指輪/リング
【使用素材】プラチナ900、ブルーダイヤ、ダイヤモンド