ジュエリーに使用する金属(地金)について解説(c25)

最近立て続けに『地金』(じがね、と呼びます)についてのご質問をいただきました。
ジュエリーに使う金属といえば『金』や『プラチナ』そして『シルバー』ということは、皆さんよくご存知かと思います。しかしその違いは?となりますと、色の違いくらいしかご存知ない方が大半ではないでしょうか。
そこで今回は『地金』に関するコラムをお届けいたします。

地金の種類 プラチナ、K18イエローゴールド、K18ホワイトゴールド

ゴールドとその品位について

ジュエリーに最も多く使用されるのは『18金』です。何故”18″なのか?を説明するには、まず「純度100%の金は『24金』と呼ぶ」ということを覚えていただかなくてはなりません。その上で、純金を3/4使用した場合(残り1/4は別の金属)、3/4 = 18/24というわけで、『18金』と呼ばれるのです。

この調合割合が硬さや粘度、加工時の扱いやすさから、ジュエリーに一番適した割合になります。金の割合がこれ以上多いと輝きを出すことが難しいですし、少ないと地金が固くなったり変色しやすくなります。『14金』『10金』『9金』という物もあり、金の割合が減る分、金額はお安くなりますが、それと共にマイナス面も増えるということになります。

金には大きく分けてイエローゴールド、ホワイトゴールド、そして最近市場によく出回っているピンクゴールドがあります。それぞれについてご説明いたします。

イエローゴールド

金と言えばこの色ですね。3/4が純金である18金イエローゴールドは、まさに”金の色”。日本ではプラチナが人気ですが、海外ではイエローゴールドに根強い人気があります。

イエローゴールドには銅が含まれていますので、使用年月と共にまれに若干変色して茶色ぽくなってしまうこともありますが、クリーニングや新品仕上げで元の色に戻すことが可能です。

ホワイトゴールド

18金ホワイトゴールドは、金以外の部分(1/4)に『パラジウム』と『シルバー』を含んでいます。この『パラジウム』が白いため、ホワイトゴールドは金でありながら白っぽく見えるのです。『パラジウム』の含有量は最低でも10%以上は含んでいることが好ましいです。パラジウムはレアメタルなので、パラジウムの含有量と相場によっホワイトゴールドの価格が上下します。

(2015年10月現在)パラジウムの価格が高いため、ホワイトゴールドの価格が高くなっています。
(2023年現在) 金、パラジウム共に相場が高騰しているため、プラチナより高い状況となっています。

ホワイトゴールドの地金の色は、プラチナに比べ若干ですが黄色味を感じます。そのため『ロジウムメッキ』を施し、プラチナ色に近づけます。『ロジウムメッキ』をかけたホワイトゴールドは、プラチナとほとんど見分けがつきません。しかし指輪の底部など擦れる箇所は、メッキが禿げて変色してしまうことがあります。長い年月をかけて徐々に剥がれるので、皆さんそれに気付いていないことも多く、改めてメッキを付け直すと「そういえばこんな色だったわね!」と驚かれることもあります。欧米では、この『ロジウムメッキ』をかけないままのホワイトゴールド商品も多く見掛けます。プラチナ色にこだわる場合は、ご購入の際にお気をつけ下さい。

ホワイトゴールドはプラチナに比べて比重が軽いので、重いものを避けたい場合は良い選択肢だと思います。

ピンクゴールド

“ピンク”と言ってもピンク色で無いことは、皆さんご存知ですね。実際はオレンジピンクのような色です。18金ピンクゴールドの金以外の部分(1/4)には銅が多く含まれ、これによりピンクがかった色を表現しています。

日本人の肌にとても馴染みが良いと言われ、イエローゴールドやプラチナ色に飽きたのでちょっと違った物を!とお考えのお客様から、ピンクゴールドのリクエストをいただくことが多くございます。しかしイエローゴールドやホワイトゴールドに比べて固いため、曲げると一番最初にヒビが入るのがピンクゴールドです。そんなことから加工が難しく、『何度も熱するような手作り加工』にはあまり向かないと言えます。

また、銅の酸化により変色しやすいといった弱点もあります。日本は湿気が多いので、チェーンなどはすぐに赤茶ぽくなってしまいます。どのぐらいの速さで変色してしまうかは、使い方や保存状態にもよります。私の印象では、ツルっとした物より凹凸のある物、また常時身に着けている物よりしまいっぱなしの物の方が変色しやすいようです。またイエローゴールドやホワイトゴールドと同様、18金→14金→10金と金の含有量が少なくなるに従って、変色の度合いも早まります。もちろん新品仕上げすれば、変色前の地金の色に戻すことは可能です。

プラチナ

ジュエリー制作で使用する『プラチナ900』は90%が純プラチナで、残りの10%には『パラジウム』が含まれているのが一般的です。プラチナは非常に粘性のある地金で、加工によっては固くするために『ルテニウム』を混ぜることもあります。

プラチナは沸点が1000度近くと高いため、加工時には地金が真っ赤になり、加工や修理が難しい場合があります。

しかしプラチナは変色の心配がない一番安定した地金です。日常使いのマリッジリングなどには最適な地金と言えるでしょう。ただプラチナは比重が重いため、出来上がりも重くなりがちです。お造りになるアイテムやその着用頻度などを考慮して、賢く地金の種類を選択することをお薦めいたします。

*ジュエリー制作の際に『ロー材』という接着剤の働きをする物を使って、地金と地金をくっつける作業があり、それを『ロー付け』と言いますが、このロー材は使用している地金と同じ色ではないので、出来上がった後にメッキを施す必要がある場合があります。

シルバーについて

通常シルバーといえばsilver925です。これはシルバーの含有量が92.5%ということです。ご存知のようにシルバーは酸化しやすく、すぐに黒くなりますので、その特性を生かした作品を作るのが良いように思います。

金やプラチナとシルバーの性質は融点、硬さや粘性、加工、仕上げの方法などがかなり違いますので、①金、プラチナを専門に扱う職人と②シルバーを専門に扱う職人に分かれていることが多い状況です。

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