GIA鑑定書におけるダイヤモンド産地証明記載について(c39)

GIAからダイヤモンド鑑定に関する新たなサービスの発表がありました。今回のコラムではその内容を皆さんとシェアすると共に、新サービスに対する私の感想を書きたいと思います。

GIAについては過去のコラムをご覧ください。
4Cは知ってるけど・・・5番目の”C”?【ダイヤモンドの基礎知識】(c03)

GIAが今回新たに提供するのは『ダイヤモンドの産地レポート』。簡単にまとめると『そのダイヤモンドがどのエリアで産出されたかを鑑定書に表記するサービス』です。

今まではダイヤの産地については表記しないと言うのが通例でした。なぜならそれを科学的に証明することは出来ないからです。

それが今回のお知らせで『鑑定書に載せる』とあるのです。何か新たに分析する技術が開発されて、ダイヤモンドから産地を判定することが出来るようになった?それは凄い!!
・・・というわけで、早々にGIA東京で講義を受けてまいりました。(2019年9月)

これから書く内容は講義受講後の私の理解ですので、もし間違いがございましたらご指摘頂けると幸いです。また感想はあくまで個人的なものですので予めご承知ください。

新サービスのポイント

①鑑定書に表記される産地は4箇所のうちのいずれか。カナダ、ロシア、南アフリカ、そしてボツワナ。

②鑑定書に記載されるまでのプロセス。
1.GIAが認定した特定の鉱山採掘業者よりラフダイヤモンド(原石)がGIAラボに持ち込まれる。
2.そこで科学的な分析がされ、原石にリファレンスナンバーが割り当てられる。
3.その後、原石は研磨業者に持ち込まれ研磨され、再度GIAラボに持ち込まれる。
4.原石時の分析結果(2)と研磨後のデータが一致するか確認。一致すれば同一のものとされ鑑定書に産地名が記載される。

③『産地特有の特徴やデータがあり、それと原石とを照らし合わせて産地を特定する』というサービスではない。

④原石を持っていて、それをGIAラボに持ち込んだとしても産地を証明することは出来ない。当然、研磨後のダイヤモンドの産地証明も出来ない。

⑤あくまでもGIAが認定した特定の採掘業者からの原石のみが受けられるサービス。

私の感想

確かに自分の購入したダイヤモンドがどこの鉱山で産出したものか分かれば、ワクワクするかもしれません。

自分が食べる野菜がどこの県の誰が作ったのか分かると安心する、そんな感覚に近い?。。。こらこら、野菜と一緒にしてはいけません!(笑)

それに「ロシア産の方がレアで綺麗ですよ」などと産地を比べるようなセールストークには気をつけなくてはいけませんね。ダイヤモンドの評価はあくまでも4C’sです。
おさらい”4Cs”【ダイヤモンドの基礎知識】(c02)

また産地から直接自分の元に来たような錯覚を受けてしまいますが、それも違うので気を付ける必要があります。

実はダイヤモンドの原産地表記はティファニーが業界に先駆けて既に始めています。
これは『倫理的なダイヤモンド調達を世界的に広めることを目的』としているようですが、これと同じく、

「あなたが購入したダイヤモンドは『紛争ダイヤモンド』ではありませんよ!」
「あなたが買ったダイヤモンドは南アフリカの子供達の貧困救済に貢献しています」

ということが分かれば、気持ち良く購入することが出来るかもしれません。

*紛争ダイヤモンド=アフリカの紛争下、武器などを購入する資金源として利用されたダイヤモンドの総称。こういった戦争に加担する資金を目的としたダイヤモンドの取引を監視、規制、処罰するための『キンバリープロセス承認制度』が国連で承認され(2000年)、現在は各国政府、ダイヤモンド会社、NGOにより流通しないよう監視されています。

ですがうーーーーーん。。。
確かにトレーサビリティは重要と言われる時代になりました。
しかしダイヤモンドは食品などのように安全性に関わるものではないですし、これってダイヤモンド購入者にとって本当に必要な情報でしょうか。。。

*トレーサビリティ=物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。日本語では追跡可能性とも言われる(ウィキペディアより)

私の疑問

●講義では原石時と研磨後の科学的分析の結果としてグラフが提示されたのですが、どれくらいの精度のマッチングが求められるのかがイマイチ不明でした。

●採掘業者がそれほど沢山あるとは思いませんが、GIA認定の採掘業者からのラフ(原石)しか扱わないのは何故でしょう?
GIAと採掘業者との信頼関係に強く依存している鑑定方法なのでは。。。と穿った見方をしてしまうのは私だけでしょうか?

皆さんはどのようにお考えですか?

こちらのサイト(RECARAT)でも上手に説明していらっしゃるのでリンクを貼っておきます。

ついに登場|ダイヤモンドの産地レポートがGIAから出ました