4Cは知ってるけど・・・5番目の”C”?【ダイヤモンドの基礎知識】(c03)

ダイヤモンドを購入された経験のある方や、ご検討中の方は”4C”はご存知かと思います。
(正しくは”4Cs”です。参考コラム:おさらい”4Cs”【ダイヤモンドの基礎知識】(c02)
今回はあまり知られていない5番目の”C”についてお話ししたいと思います。

5番目の”C”=『Certificate:鑑定書』

ダイヤモンドを選ぶ際に、決め手の1つとなるのが鑑定書の内容。
ですからその鑑定書の内容が本当に正しいか?、不当に甘く評価されていないか?など、鑑定書の“信頼性”は大変重要な問題です。

実はダイヤモンドの鑑定書は、公的機関が出してくれる品質保証書ではありません
ダイヤモンドの鑑定機関は日本国内だけでも大小数多く存在し、そのすべてが民間企業です。
ですから同じダイヤモンドを異なる鑑定機関に出したら違う結果になった!という事も珍しくありません。

というわけで今回は5番目の”C”と呼ばれる『鑑定書』についてお話ししたいと思います。

鑑定書の種類

現在、世界のダイヤモンド取引所で公認されている鑑定書は、大まかに言って

  • GIA(Gemological Institute of America:米国宝石学会)
  • HRD(Hoge Raad voor DiamantまたはDiamond High Council:ダイヤモンド・ハイ・カウンセル)

の2つの機関が発行した物と、あとはそれに準ずる2~3の鑑定書だけです。

日本の鑑定機関は上述のGIAが推奨するグレーディングシステムを採用し、同教育機関で資格を取得したグレーダーが鑑定、鑑別しています。
しかし残念ながら日本の鑑定機関のほとんどは、世界のジュエリー市場ではほとんど認知度がありません。
そのため『日本の鑑定機関で発行された鑑定書は日本国内でのみ通用するもの』と考えた方が良さそうです。

プロが信頼するGIA

さてここでは私の母校でもあります『GIA』について、簡単にご説明させていただきます。
(私はGIA米国サンタモニカ校(現在はカールスバッド、CA)にてGGの資格を取得しております。)

GIAロゴ GIAディプロマ米国宝石学会:Gemological Institute of America
アメリカのカリフォルニア州カールスバッドに本部を置く、宝石の鑑定・教育機関です。
特に教育に力を注いでおり、その一定の課程を修了した人を”GG = Graduate Gemologist”と認定し、世界各国に輩出しています。
日本では宝石鑑定士と訳されます。
日本の鑑定機関で働くスタッフ、つまりグレーダーは現地GIAの卒業生か日本で通信過程を修了した人達です。

厳正・中立な非営利機関

GIAは他の多くの鑑定機関と違い非営利の鑑定機関です。
鑑定業務に利益を求めないため、鑑定を依頼する団体や企業からの影響を受けません。
厳正な鑑定書とはこのような中立な立場の下で初めて本来の意味を持つ、と言えるのではないでしょうか。
(ちなみに国内のほとんどの鑑定機関は株式会社です。そのためこのような事件が起こってしまうのかもしれません。)

世界基準”4Cs”

GIAは1931年に南カリフォルニア大学鉱物学研究室から独立して設立されました。
曖昧で専門家に頼っていた鑑定という分野に科学的な測定方法を導入し、鑑定基準を確立したのです。
あの有名な”4Cs”はGIAが作った物で、今やこのGIAの鑑定基準が世界で通用するものさしとなっています。
<参考>GIAのウェブサイト『4Cs of Diamond Quality by GIA』

『GIA鑑定書付きダイヤモンド』は高い!?

GIA鑑定書現在日本に流通している『GIA鑑定書付きダイヤモンド』は、アメリカのGIAで鑑定され、鑑定書(画像:左)が付いた状態で日本に輸入された物です。(追記1、修正あり)

GIAでは鑑定書に記載するレポートナンバーを、ダイヤモンドのガードル部分(側面)にレーザー刻印することができます。
これによりダイヤモンドと鑑定書が同一であることを証明する事が出来ます。
またレポートナンバーは鑑定結果と共にGIA本部にも記録されます。
そのためもし鑑定書を無くしてしまっても、レーザー刻印からレポートナンバーが分かればそのダイヤモンドの鑑定結果を確認することが可能です。
(現在では日本の鑑定機関でもレーザー刻印を受け付けているところもあります)

ソーティング袋

日本に入ってくる大多数のダイヤモンドは海外から未鑑定の状態で輸入されます。
その後、日本の鑑定機関で簡易鑑定され『ソーティング』(画像左はその一例)というものが発行されます。
これは重たくかさ張る冊子状の証書を省略するための、鑑定結果(4Cs)が表示された小袋状の物です。
業者間ではこの小袋の中に直接ダイヤモンドを入れて売買します。

そして小売店にたどり着いた後、必要があれば再度、鑑定機関へ持ち込み、皆さんがよく目にする冊子状の鑑定書を作成してもらいます。

それに比べアメリカGIAで鑑定書を取得しレーザー刻印が施されたダイヤモンドは、その分の料金が加算されて輸入されますので、『GIA鑑定書付きダイヤモンドは高い』というイメージがあるのかもしれません。

どんな鑑定書を選べばいいの?

例えば投資目的や保有資産の1つとして1ct超、高品質のダイヤモンドを購入するのであれば、GIAやHRDなど世界で通用する鑑定書をお勧めいたします。
もしくは購入したダイヤモンドがお子様に、そのお子様からお孫様に・・・と受け継がれていくことを想定し、世界のどこに住んでいても価値が証明できるように・・・とGIAやHRDの鑑定書付きダイヤモンドを選択する、という考え方もあるでしょう。

しかしそうでなければ、GIAやHRDにこだわりすぎる必要はないと思います。
いつまでも大切に身に着け、再販は考えていないということであれば日本国内の鑑定書で十分でしょう。

<参考>あわせてこちらもお読みください。
おさらい”4Cs”【ダイヤモンドの基礎知識】

ーーー 追記1 ーーー
*2013年末、GIA Japanが開設されたので、日本国内でも鑑定、鑑別が可能となりました。
*2015年をもって日本国内のGIA教育機関は閉校となり、日本国内で鑑定士資格は取得できなくなりました。
以上2点追記いたします。

ーーー 追記2 ーーー
『鑑定書』と『鑑別書』は全く異なる物です。
『鑑別書』とはその宝石の種類および真偽(天然石か?合成石か?など)を示すもので、『鑑定書』の4Csのような宝石の品質については一切記載されません。
お間違いの無いようお気をつけ下さい。

●ジュエリーリフォームしたら鑑定書を取りなおさなくてはいけないの?
●婚約指輪を買う前に。ダイヤモンド選びのポイント
●ダイヤモンド基礎知識/おさらい《4C’s》
●資産としてのダイヤモンドを考える