ロシアから、全てを包み込むような緑の宝石
『ガーネット』と聞くとほとんどの方は赤色を想像すると思います。しかしガーネットには青色以外ほぼ全ての色があります。成分の組み合わせ等により大きく6グループに分類されますが、それぞれその中間のものもあり、実にバラエティに富んだ色石です。
その中でも美しいものには個別の宝石名があるのですが、やはりダントツに美しいのは『デマントイドガーネット』でしょう。何を隠そう私もその魅力にすっかり取り憑かれてしまった1人です。
デマントイドガーネットの歴史は古く、1853年頃ロシアの中央ウラル山脈近くの鉱山で発見されました。新しい宝石には発見者の名前が付けられることが多いのですが、あまりにも美しい輝きを放っていたため、オランダ語で『ダイヤモンドのような』という意味の『デマントイド』と名付けられました。色石として、なんと名誉ある名前でしょう!
ロシアの宮廷ジュエリーとして愛用され、その後ヨーロッパにも伝わり、エドワーディアン(イギリス国王エドワード7世の時代に作られたスタイル)のモチーフジュエリーなどにも多く利用されました。あの『ティファニー』も数々のデマントイドガーネットを使った宝飾品を発表しています。
しかしロシアが革命により社会主義国家になると宝石の採掘は中断され、市場からぱったりと消えてしまいます。その後、ソ連崩壊後の2000年に入り再び採掘が始まると私たちの手元にも届くようになりましたが、いまだ稀少な宝石であることに違いはありません。
それでは、デマントイドガーネットの特徴についてご説明いたしましょう。
色
デマントイドガーネットは、ガーネットの6つのグループの中の『アンドラダイトガーネット』に属します。このグループのガーネットは鉄(Fe)の影響で褐色から黄色のものが多いのですが、デマントイドガーネットだけはクロム(Cr)を含んでおり、その影響で緑色に発色します。
緑色と一口に言っても蛍光色のグリーンから黄緑色まであり、その中でも色の濃い蛍光グリーンの物が高級とされます。(ちなみに『グロッシュラライトガーネット』グループにも緑色のガーネットはありますが、これはデマントイドガーネットではありません。)
サイズ
1ct以上のサイズは珍しく、2ct以上の良質の石は超レアストーンとしてかなりの高額で取引されるようです。
照り
分散度はダイヤモンドの0.044よりも強い0.057! 「デマントイド=ダイヤモンドライク」という名前の由来です。
ダイヤモンドでお馴染みの『ラウンドブリリアントカット』に研磨すると非常に強い照りが現れます。その昔、初めてこのカットに研磨されたデマントイドガーネットを見た人達は、その眩い輝きにさぞや驚いたでしょうね。その場面を想像すると何だかドキドキしてしまいます。
ファイア
宝石に現れる光の効果の1つで、デマントイドガーネットの場合はギラギラっと赤やオレンジの光が出現します。無色透明のダイヤモンドにはカラフルな虹の光が現れる『ディスパージョン』という現象がありますが、緑のボディーカラーにその補色である赤やオレンジが現れるというのはとてもユニークな現象ですね。
ホーステールインクルージョン
これはルーペで覗くと見ることができる、様々な形をしたヘアライン状のインクルージョン(内包物)のことです。ホーステール(馬の尻尾)のように見えることから、馬を愛するヨーロッパの貴族の間で『幸運の象徴』として大変人気があります。
通常インクルージョンは傷と見なされ宝石の価値を下げてしまう要素ですが、デマントイドガーネットに限ってはその逆で、その形状により価格が跳ね上がることも! 分散度が非常に高いため、インクルージョンあっても輝きをほとんど邪魔しないということも価値が下がらない要因のひとつです。
このようにたくさんの個性を持つデマントイドガーネットは、ルビーやサファイヤに勝るとも劣らないとても力のある色石。何よりこの全てを包み込むような緑色に、人々は安心感や安定、調和を感じ魅了されるのでしょう。
しかし宝石は自然物ですので、同じ色の物は2つとありません。私が好きな緑色は木や森、自然を感じられるような中間色の緑なのですが、あなたはどんな緑色がお好みですか?あなたの心に安らぎをもたらす、美しい緑色のデマントイドガーネットに出会えるといいですね!
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デマントイドガーネットについてはこちらのコラムでもご紹介しております。
ネオングリーンの閃光!デマントイドガーネット(c19)