ステキなお話です。そして本当のお話です。
T様がお持になったジュエリーは、0.7ct程の美しいブルーダイヤモンドの指輪です。あれ？ この色のダイヤ、以前にも見たことある・・・。
みなさんは『遺灰ダイヤ』をご存知ですか？
『遺灰ダイヤ』とは、亡くなられた方の遺骨から炭素を抽出し、精製させた合成ダイヤモンドです。天然ダイヤであれば何百、何千年もかかって地中深くで結晶化するものを、高温・高圧処理を人工的に施すことにより生産することができるそうです。硬度、比重、屈折率、分光特性など、天然のダイヤモンドと寸分違わない特質を持っているとのことで、確かにルーペで見るとダイヤモンド特有の輝き、硬さなどが見てとれます。もちろん鑑定書も付いているので、その品質を疑う余地はありませんが、ひとつ違う事と言えば『無色ではない』ということ。ブルーダイヤが主流のようで、調べてみた所、イエローやグリーンも生産できるようです。
さて、お話を戻します。実はこれまでにも『遺灰ダイヤ』のジュエリー制作を承っており、『遺灰ダイヤ』を目にするのはこれで3ピース目です。ですから見てすぐに「これは遺灰ダイヤかしら？」と分かりました。
｢実はこれ主人なんです。｣
・・・・・やっぱり。
ダイヤは毎日見ていますから緊張することなど全くない私ですが、こと『遺灰ダイヤ』となると話は別です。お客様にとってみれば大切な方の分身、魂が入っているかも・・・と考えただけでとても緊張いたします。ダイヤモンドはこの世で一番硬いものですから、何をしても傷つく事はないのですが、『遺灰ダイヤ』と聞いたその瞬間から、そーっとそーっと、細心の注意を払ってのお取り扱いとなります。
すでに指輪に入っていた『ご主人ダイヤモンド』ですが、T様はその枠がお気に召さず作り変えをご希望です。花の中央にダイヤモンドが留まっているようなデザインなのですが、確かに『作り』も『デザイン』もいまひとつな出来栄え。基本的なデザインのコンセプトは変えずに、新たな指輪へのお作り直しをお引き受けしました。
そして話は自然とご主人の話題へ・・・。
２年ほど前に交通事故で、突然T様の前からいなくなってしまわれたそうです。なかなか立ち直る事が難しく、とてもお辛そうでした。｢それにしても、どうして『遺灰ダイヤ』を造ろうと思われたのですか？｣との私の質問に、ポツポツとご主人との思い出をお話ししてくださいました。
ご主人が生きていらっしゃる時に『遺灰ダイヤ』のテレビ番組を偶然お二人で見ていたそうです。その時はなんの気なしに仰ったのでしょうが、T様に向かって ｢もし僕が死んだら、僕の骨でダイヤモンドを作ればいいよ。そしたら世界一綺麗に君のために輝いてあげるよ。｣と。
１ヵ月後、出来上がった指輪がこちらです。この指輪を初めて目にしたT様が、心なしか元気そうに見えたことが、私にはとても嬉しかったです。
ご主人のこと以外にも、たくさんお話しをさせていただきました。まったくの他人である私にだからこそ、色々と気兼ねなくお話ししてくださったのだと思いますが、そんな悲しいお話の中にも、私は、T様がとても幸せそうに見え、羨ましく思いました。
T様がなぜかとても幸せそうに見えたのは、『ご主人に愛されている確信と自信がお顔に表れていたから』なのだと思います。
「君のために世界一綺麗に輝くよ」なんて言ってもらえたら、女としてどんなに幸せなことでしょう。亡くなってもずっと愛情を感じていられるなんて、本当に本当に・・・。
その後T様よりお手紙をいただきました。 お許しを得てご紹介させていただきます。
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その節はお世話になりありがとうございました。
実は７月３日は主人の命日でした。主人が突然いなくなってしまってから丸２年が経ちました。この時期はとても辛いです。何もかもが鮮明に思い出され、主人はもう帰ってこないと実感させられます。２年間、必死で生きてきたけど、気持ちはあの日に逆戻りしていくばかりで、主人の側に行きたいと心から願っている毎日でした。
でもお墓の前で指輪がものすごく輝いて見えたんです。キラキラキラキラ輝いて、「○○ちゃん、一緒に居るよ」って言ってくれているように思えました。
最近は辛い事しか思い出せなかったのに、元気なころの優しく笑っている主人の顔が自然と思い出されました。「なるよ、なる！世界一きれいなダイヤになるからずっとずっと身に着けていてね」と笑顔の主人がいて。。。お墓の前で大泣きしました。でもすごくスッキリして、私はまた一歩進んでいかなきゃ、と思えました。
指輪、きれいに本当に輝かせもらえてよかったです。指輪が輝いているということは、主人もきっと天国で輝いているはず。。。だから私も輝かなきゃ、と今は思っています。林さんにこんなステキなジュエリーと生きていく勇気をもらえた気がします。ありがとうございました。心から感謝しています。
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まだまだお若いT様。人より辛いご経験をされたかもしれませんが、なによりT様には、ステキなご主人との思い出と、世界一輝くダイヤモンドがあります。これからもっともっとお幸せになって、明るく輝く女性になってくださいますよう、心よりお祈りしております。
こんなステキなお話を皆様にお伝えすることができて、幸せです。それを快くお許しくださったT様に、心から感謝いたします。