宝石の町・御徒町から見たジュエリー業界の今昔 《店主ブログ》

ジュエリーコラムC05から転載(2018.8.31)

『世の中少しは景気が上向いた』という話もありますが、嗜好品であるジュエリーの業界が良くなるのはまだまだ先の話・・・というか、バブルの頃のようにジュエリーがバンバン売れるなんてことはもうないでしょうね。
あの頃の状態の方がおかしかったわけで、ある意味、今が正しい状態なのかもしれません。

20年前の東京の東上野・御徒町界隈は、どこをみても宝石関係の業者ばかりでした。
しかし今は以前宝石店だった所は飲食店や美容院に取って代わり、昔の活気は見られません。
私の知り合いの業者でも、景気の良い答えを返してくれるところはひとつもありません。

そしてなんといっても目に付くのが淡水パールや半貴石の連を取り扱った店の増加。
こんなに同じような店が増えちゃって売れるの?と思っていましたが、その数は増える一方。
やはり今は高いものは売れず、アクセサリー感覚のこういったものが売れるのでしょう。
概観はそんな感じの御徒町界隈です。

何を売っても売れたバブル期の日本。
未来は明るく、新卒のOLさんが初任給で『ファーストジュエリー』と称してジュエリーを買っていた時代。
その頃は「ジュエリーは誰にでも買える」という感覚がありました。
けれど物品税という税金があったので、この税金の掛からない37,500円以下の安いジュエリーばかりが売れました。

そして今のジュエリー業界の低迷。
バブル崩壊のせいばかりとは言えない気がします。
安いジュエリーばかり作っていたあの時代、ジュエリー業界はお客様のために、”本当に良いもの”を提供する努力をしていたんだろうか?
ひいては、自分達の業界を本当に愛していたんだろうか?
今、そのしっぺ返しを食っているような気がしてなりません。

さらにインターネットの普及。
メーカーや輸入業者から直接買い物が出来る時代になり、メーカー→卸→小売という構図が壊れてしまいました。
業界関係者しか入れないはずの国際展示会場にも、一般の人がたくさん入り込んでいます。
これって自分達で自分達の首を絞めているんじゃないだろうか?と疑問に思います。

情報はネットで調べればすぐ分かります。
けれど「電化製品をどこで買えば一番安く買えるか?」というような買い方とは違うと思うんです、ジュエリーは。
なぜなら宝石は、世界中に同じ物は1つとしてありません。
値段だけで比べるなんてとても残念な選び方です。

しかし私もこうしてホームページを持っています。
『宝石は”人”から買う』とよく言われますが、だとしたら私のようなサービスを提供している者にとって、東京から発信して、遠く離れた人と接することが出来る唯一の手段であるインターネットはやはり素晴らしい物。
インターネットの功罪については一概に言えません。

ジュエリーはそんなに頻繁に買うものではありませんよね。
一生のうちに何回かある記念日や、親から子へ贈ったり贈られたり、大切な人へのプレゼントだったり。
意味や想いを込めて買い、ジュエリーを見る度にそれを思い出すのです。
だからこそどうか失敗のないステキなお買い物をしていただきたい。

そしてちゃんとした『宝石の文化』が日本に根付きますように!

この業界に長くいるうちに、たくさんの汚い話や「えっ?!?!」という儲け話も聞きました。
なので時々、この業界にいることが無性に嫌になることがあります。
私のような性格の者は合わないんじゃないかしら?と・・・

でも、たくさんの人と知り合えるのは魅力のひとつですし、お客様が喜んでくださった時はこの上なく嬉しいのです。
だから今日もこの仕事を続けています。

ご批判もあると思いますが、生意気に色々書いてしまいました。